この作品は、J.Sバッハの真作でないとされた「フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ ト短調(BWV1020)をリコーダー用に書き換えたものです。
この作品は1900年に刊行された旧バッハ全集ではヴァイオリンソナタとして収録されていましたが、100年後の2000年に完成した新バッハ全集では、フルートソナタBWV1031とBWV1033 の2曲とともに、J.S バッハの真作ではないとして削除されました。このBWV1020とBWV1031は構造が酷似しており、明らかに同一人物の作品です。真の作曲者については諸説ありますが、J.S バッハの次男、C.Ph.E バッハが、父 J.S バッハの指導のもと作曲したという説が有力です。C.Ph.E バッハ自身は、BWV1031について、父の作品と述べており、BWV1020、BWV1031ともJ.S バッハが深く関与していたことは間違いありません。
曲は急・緩・急の室内ソナタ形式です。第1楽章は、分散和音によるチェンバロの長い前奏の後、フルートが下降音型によるカンタービレ風の旋律を奏で始めます。フルートとチェンバロの動きは構造的にBWV1031とほぼ同じです。第2楽章は、フルートの穏やかで息の長い旋律を支えるチェンバロの存在感が印象的です。BWV1031の第2楽章同様、時にはフルートと絡みながら、チェンバロは最後まで8分音符を刻み続けます。第3楽章は一転してフルートとチェンバロが互いに模倣し合いながら力強く進行していきます。前奏が短いことや繰り返し記号などから、この楽章もBWV1031の第3楽章を彷彿とさせます。
かつてはリコーダー用に短3度上に移調した「変ロ短調版」が出版されていましたが、♭5つという、リコーダーにとって非現実的な調であること、また、チェンバロの最高音がF6になってしまうことから、最近は見かけなくなりました。この作品をリコーダーで演奏するには、長2度上の「イ短調」が最適でしょう。
スコア/A4版16ページ パート譜/リコーダー、オブリガートチェンバロ(譜めくり不要)
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